其之壱

Jezz-01

7月7日
願い事を短冊に記して、七夕飾りの笹に吊るすと、願いが叶うという民間信仰があるらしい。
馬鹿馬鹿しいことこの上ないと私は思ったが、鉄之丞にその短冊とやらを一枚呉れてやった。
案の定、彼は己の願い事を真剣に考察するあまり、妄想無間地獄に陥ったのである。
一枚の短冊を前にした彼は、「妄想中」だの「煩悩全開」と書いてあるかのごとくの顔となり、
吸血鬼の特殊能力を用いるまでもなく、蘭童と私には彼の脳内が手に取るようにわかった。
そのあまりの俗物ぶり、いやさオタっぷりに、蘭童は逆上し、私は腹が捩れる思いがした。
蘭童が釘バットを振り回したところで、鉄之丞とて高い再生能力を持っているわけだから、
多少の血は流れたにしても、命を失う心配はない。
私は被害を受けぬ程度の距離を保って、懸命に笑いをこらえた。
鉄之丞のオタ全開の妄想といい、「なめとんのか、ごるぁ」「ぬっころすぞ、ぼけぇ」等の蘭童の口汚い罵倒といい
巷には「死ねばいいのに」という言い回しがあるが、まさにそれである。死ねばいいのに、どっちも。
何百年も生きているくせに、成長してないどころか、むしろ退行してるだろ、おまいら。
超絶長生きした揚げ句に、オタとDQNに成り果てるってどうよ? どうなのよ?
だがこれも長すぎる人生を楽しむひとつの方法なのかも知れない。
これからも、ぬるく笑いながら見守ってやることにしよう。
                           伊香川 柊二

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